顧問弁護士とは、企業や団体と継続的な契約を結び、法律に関する相談や助言を行う弁護士のことです。主な役割は、法的リスクの予防と管理、トラブル対応と紛争解決、経営判断のサポートなどです。
顧問弁護士は企業の事業内容や背景を熟知し、信頼関係を構築することで、迅速かつ的確な法的アドバイスを提供します。日常的な法務業務から緊急時の対応まで、幅広くサポートします。
具体的には、契約書の作成・レビュー、労働問題への対処、コンプライアンス体制の構築、知的財産権の保護、クレーム対応、債権回収、訴訟対応などを行います。また、事業戦略に関する法的アドバイスやM&A、事業承継に関する助言も行います。
顧問弁護士を持つことで、企業は法的リスクを最小限に抑え、経営判断の質を向上させることができます。
顧問弁護士と一般の弁護士の主な違い7つ
- 契約形態
顧問弁護士: 企業や団体と継続的な顧問契約を結ぶ
一般弁護士: 個別の案件ごとに委任契約を結ぶ - 関係の継続性
顧問弁護士: 長期的なパートナーシップを築く
一般弁護士: 特定の案件が終了すれば関係も終了する - サービス内容
顧問弁護士: 日常的な法律相談や契約書チェックなど幅広いサポートを提供
一般弁護士: 特定の訴訟や紛争解決など個別の案件に対応 - 企業への理解
顧問弁護士: 企業の事業内容や背景を深く理解している
一般弁護士: 案件ごとに企業の状況を把握する必要がある - 相談のしやすさ
顧問弁護士: 気軽に相談できる
一般弁護士: 相談のたびに費用がかかる - 費用
顧問弁護士: 月額や年額の顧問料を支払う
一般弁護士: 案件ごとに着手金や報酬を支払う - 対応の迅速性
顧問弁護士: 優先的に対応してもらえる
一般弁護士: 受任までに時間がかかることがある
このように、顧問弁護士は企業の法務全般を継続的にサポートする役割を担い、一般弁護士は個別の法的問題に対応するという違いがあります。
顧問弁護士の主な役割5つと重要性
顧問弁護士は企業にとって重要な役割を果たす存在であり、その主な役割は以下の5つに分けられます。
契約書の作成とリーガルチェック
顧問弁護士は企業の契約書を作成し、リーガルチェックを行います。契約書は企業活動において重要な役割を果たし、取引先や顧客との関係を法的に明確にするために必要です。顧問弁護士は、契約書が法律に準拠しているか、自社に不利な条項が含まれていないかを確認します。これにより、将来的なトラブルを未然に防ぎ、企業の利益を守ることができます。
人事・労務トラブルの対策と対応
企業が従業員を雇用する際には、さまざまな人事・労務トラブルが発生する可能性があります。顧問弁護士は、労働法規に基づいた就業規則の整備や労務管理の改善を支援し、トラブルの予防に努めます。また、不当解雇や未払い賃金請求などの問題が発生した場合には、迅速かつ適切な対応を行い、企業側の立場を守ります。
社内規定の整備とコンプライアンスの確保
顧問弁護士は、企業の実情や事業内容に応じた社内規定の整備を行います。これには、コンプライアンス体制の構築や法令遵守のためのアドバイスが含まれます。適切な社内規定を設けることで、企業は法的リスクを軽減し、健全な経営環境を維持することが可能になります。
法的紛争・トラブルへの対応
企業活動には多くの法的リスクが伴います。顧問弁護士は、トラブルが発生した際に迅速かつ適切に対応し、被害を最小限に抑える役割を果たします。訴訟や交渉が必要な場合には、企業の代理として相手方と交渉し、有利な条件で解決を図ります。これにより、企業は日常業務に専念できる環境が整えられます。
経営者への法的アドバイスとサポート
顧問弁護士は経営者のパートナーとして、日常的な経営判断における法的アドバイスを提供します。これには、新規事業展開や資金調達など、多岐にわたる経営課題への助言が含まれます。法律専門家としての視点から経営者をサポートすることで、企業はより効率的で正確な意思決定が可能となります。
これらの役割を通じて、顧問弁護士は企業経営を法的側面から支え、リスク管理やトラブル防止に貢献します。
顧問弁護士を雇う・利用する7つのメリット
顧問弁護士を利用することで、企業は様々なメリットを得ることができます。以下に7つの主要なメリットを挙げ、それぞれについて詳しく解説します。
法的問題の気軽な相談
顧問弁護士がいることで、企業は日常的に発生する様々な法的問題について気軽に相談することができます。これには、取締役会や株主総会に関連するガバナンス問題、取引先との契約問題、消費者クレーム対応、SNSによる名誉毀損問題、会社の買収問題など、多岐にわたる案件が含まれます。
問題の大小に関わらず相談できることが大きな利点です。小さな不安や疑問でも、放置しておくと大きな問題に発展する可能性があります。顧問弁護士に早期に相談することで、潜在的なリスクを最小限に抑え、問題が拡大する前に適切な対応を取ることができます。
また、日常的なビジネス上の疑問や懸念事項についても相談できるため、経営者や従業員の不安を解消し、より確実な意思決定を行うことができます。これにより、企業全体のリスク管理能力が向上し、安定した経営基盤を築くことができます。
迅速な対応と優先的サポート
顧問弁護士がいることで、法的問題が発生した際に迅速な対応が可能になります。緊急を要する案件や行政による立入検査などの突発的な事態にも、時機を逸することなく適切なサポートを受けることができます。
顧問弁護士は通常、顧問先の業務を優先的に扱います。これにより、問題が発生した際に新たに弁護士を探す手間が省け、迅速に法的トラブルに対処することができます。また、日頃から会社の状況を熟知しているため、背景事情を一から説明する必要がなく、効率的なアドバイスを受けられます。
さらに、顧問弁護士は常に会社と委任関係にあるため、相手側の弁護士と利益相反の問題が生じる心配がありません。これにより、企業は安心して法的サポートを受けることができます。
予防法務の実践
顧問弁護士の重要な役割の一つに、法的トラブルの予防があります。日常的な契約書の作成やチェック、会社のコンプライアンスの確認などを通じて、潜在的な問題を事前に特定し、対策を講じることができます。
例えば、他社との契約締結時に、相手企業の財務状況に不透明性がある場合でも、自社に不利にならないよう契約内容を吟味し、リスクを最小限に抑えた契約書を作成することができます。これにより、契約後に発生しうるトラブルを未然に防ぐことが可能になります。
また、顧問弁護士は企業の業務内容や業界の慣行を熟知しているため、その企業特有のリスクを把握し、適切な予防策を提案することができます。これにより、企業は法的リスクを最小限に抑えつつ、安定した事業運営を行うことができます。
コスト効率の向上
顧問弁護士を利用することで、長期的には法務コストの削減につながる可能性があります。単発で弁護士に相談する場合、毎回相談料が発生しますが、顧問契約を結ぶことで定額の月額料金で様々な法的サービスを受けることができます。
特に、複数の法的問題が同時に発生した場合や、継続的な法的サポートが必要な場合には、顧問契約のコスト効率が高くなります。例えば、自社製品の欠陥による複数の損害賠償請求に対して、個別に弁護士に依頼すると都度費用が発生しますが、顧問弁護士であれば追加費用なしで包括的に対応してもらえる可能性があります。
また、顧問弁護士は企業の状況を熟知しているため、新たな案件が発生した際も、背景説明に時間を割く必要がなく、効率的に対応できます。これにより、時間とコストの両面で節約が可能になります。
企業の信頼性向上
顧問弁護士を置くことは、企業のコンプライアンス意識の高さを示す一つの指標となります。近年、コンプライアンスの強化が重視される中、顧問弁護士の存在は企業の法令遵守への取り組みを対外的にアピールする効果があります。
顧問弁護士がいることを公表することで、取引先や消費者に対して企業の信頼性を高めることができます。これは、順法精神や危機管理意識の高さを示すシグナルとなり、ビジネス上の信用向上につながります。
また、法的な裏付けのある経営判断を行っていることを示すことで、株主や投資家からの信頼も得やすくなります。結果として、企業価値の向上や、取引機会の拡大につながる可能性があります。
経営判断のサポート
顧問弁護士は、単なる法的アドバイザーにとどまらず、経営判断のサポート役としても機能します。企業の事業展開や経営戦略に関する法的側面からのアドバイスを提供することで、より安全で効果的な意思決定をサポートします。
例えば、新規事業の立ち上げ、M&A、事業承継などの重要な経営判断において、法的リスクの分析や対策の提案を行います。また、業界特有の規制や法改正の情報を提供し、それらが企業活動に与える影響を分析することで、経営者の意思決定をサポートします。
さらに、顧問弁護士は企業の事業内容や経営方針を熟知しているため、単なる法的アドバイスにとどまらず、企業の長期的な利益を考慮した戦略的なアドバイスを提供することができます。これにより、企業は法的リスクを最小限に抑えつつ、事業拡大や競争力強化を図ることができます。
従業員の安心感向上
顧問弁護士の存在は、経営者だけでなく従業員にとっても大きな安心感をもたらします。従業員が日常業務で直面する法的な疑問や懸念事項について、気軽に相談できる環境が整うことで、従業員の不安を解消し、業務効率の向上につながります。
例えば、契約書の作成や取引先とのトラブル、労務問題など、従業員が直面する様々な法的課題について、顧問弁護士に相談することができます。これにより、従業員は自信を持って業務に取り組むことができ、潜在的なリスクを早期に発見し対処することが可能になります。
また、従業員が顧問弁護士に相談できる体制を整えることで、企業全体のリスク管理能力が向上します。従業員レベルで発生する可能性のある法的問題を早期に把握し対処することで、経営者の知らないところで発生する紛争の火種を未然に防ぐことができます。これは企業全体の法的リスク管理の強化につながり、安定した事業運営に寄与します。
顧問弁護士を利用する際のデメリット
まず、毎月の顧問料が発生することが最大のデメリットです。顧問料は通常月額1万円から10万円程度で、企業の規模や業務内容によって異なります。この費用は、法的トラブルの有無にかかわらず定期的に発生するため、特に小規模企業にとっては負担となる可能性があります。
また、顧問弁護士の利用頻度が少ない場合、費用対効果が低下する恐れがあります。法的問題が少ない企業にとっては、毎月の顧問料が無駄なコストとなってしまう可能性があります。
さらに、顧問弁護士が自社の業務内容や特殊性に精通していない場合、適切なアドバイスを得られない可能性もあります。特に専門的な知識が必要なトラブルが発生した際、顧問弁護士だけでは対応できず、別の専門家を探す必要が生じる場合もあります。
最後に、顧問弁護士との相性が合わない場合、コミュニケーションの問題が生じる可能性があります。これにより、顧問弁護士を十分に活用できず、結果として費用対効果が低下する恐れがあります。
中小企業と大企業における顧問弁護士の役割の違い
中小企業の場合
幅広い法務サポート
中小企業の顧問弁護士は、企業法務全般についてオールマイティに対応することが求められます。法務部がなく、法律に精通した人材が少ない中小企業では、顧問弁護士が法律面をトータルでサポートする唯一の存在となることが多いです。契約書の作成やリーガルチェック、取引先とのトラブル対応、労務面の整備、法改正への対応など、基本的な部分から専門的な内容まで、幅広い法務サポートを提供します。
リスク管理と予防法務
中小企業の顧問弁護士は、企業のビジネス活動に関連する法的リスクを事前に特定し、回避策を提案する重要な役割を担います。予防法務の観点から、想定されるトラブルを未然に防ぐための対策を講じることが求められます。これには、契約書の整備、コンプライアンス体制の構築、従業員教育などが含まれます。顧問弁護士は、中小企業が法的リスクを最小限に抑え、健全な経営を続けられるよう支援します。
迅速な問題解決と経営サポート
中小企業では、法的問題が発生した際の迅速な対応が求められます。顧問弁護士は、企業の日常的な運営や特有の事情を理解しているため、問題が発生した際に迅速かつ適切な対応が可能です。また、法的アドバイスだけでなく、経営判断のサポートも行います。中小企業の経営者が経営に専念できるよう、法的トラブルの対応を任せることで、会社の発展に寄与します。
大企業の場合
専門性の高い法務サービス
大企業の顧問弁護士は、特化した法律知識や専門性の高いサービスを提供することが求められます。業界特有の法律問題や国際法の適用など、高度な専門知識が必要とされる場面が多くあります。そのため、特定分野に特化した法律の専門家や、国際的な取引に精通した法律家が顧問弁護士として活躍します。大企業では、分野ごとに専門の弁護士を契約しているケースも多く、より高い専門性が求められます。
戦略的アドバイスと企業成長支援
大企業の顧問弁護士は、日常的な法律問題の解決だけでなく、企業戦略に関わる重要な決定においてもアドバイスを提供します。M&A、新規事業展開、知的財産戦略などの分野で、法的観点から企業の成長を支援します。顧問弁護士は、市場のトレンドや新技術、規制の変更など、重要な情報を提供することで、企業がより効果的な戦略を立てるのを助けます。また、新しいアイデアや視点をもたらし、企業のイノベーションを促進する役割も担います。
高度なリスク管理とコンプライアンス体制の構築
大企業では、法律リスクの管理とコンプライアンス体制の構築が重要な課題となります。顧問弁護士は、リスク管理計画の策定やコンプライアンスプログラムの実施を通じて、企業が法的な問題に効果的に対応できるよう支援します。
大規模な訴訟リスクの評価や対応策の提案、国際的な法規制への対応など、複雑かつ高度なリスク管理が求められます。また、企業の社会的責任(CSR)や環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する法的アドバイスも、大企業の顧問弁護士の重要な役割となっています。
顧問弁護士の選び方・比較すべき重要な7つの項目
以下の表は、顧問弁護士の選び方・比較すべき項目をまとめたものです。それぞれの詳しい内容は後述します。
項目 | 要点 |
---|---|
1. 企業法務の経験と実績 | • 様々な企業法務案件の経験 • 企業活動への深い理解 • 法的リスクの予防能力 • 過去の案件を踏まえた実践的アドバイス |
2. コミュニケーション能力 | • 説明のわかりやすさ • レスポンスの適切さ • 多様なコミュニケーション手段への対応 • 親身な対応 |
3. 顧問料とサービス範囲 | • 料金プランの確認 • 無料対応の範囲と回数 • 追加料金が発生する条件 • 自社ニーズとの適合性 |
4. 専門性と対応可能な法律分野 | • 自社に関連する法律分野の専門知識 • 業界特有の法規制や慣行への理解 • 国際法や外国法制度への精通(必要に応じて) |
5. 戦略的提案能力 | • 将来的リスクの予見 • 予防策の提案 • 経営的視点からの助言 • 企業成長への貢献 |
6. レスポンスの速さと柔軟性 | • 緊急時の迅速な対応 • 営業時間外や休日の対応可能性 • 適切なアドバイスの質の確保 • 企業の状況に応じた柔軟な対応 |
7. 事務所の規模と体制 | • 法律事務所の規模と専門分野の幅 • パーソナルな対応や特化サービスの可能性 • サポート体制とITツールの活用状況 • オンライン対応やセキュリティ面の整備 |
企業法務の経験と実績
企業法務に関する十分な経験と実績を持つ弁護士を選ぶことが重要です。単なる法的知識だけでなく、様々な企業法務の案件に携わった経験や企業活動への深い理解が不可欠です。顧問弁護士には、企業活動の中に潜む法的リスクを予防し、適切なアドバイスを提供する能力が求められます。
候補となる弁護士のこれまでの経験や実績、取り扱った案件の種類や規模について詳しく聞き、自社のニーズに合致するかを確認しましょう。また、その弁護士が自社にどのようなサービスを提供できるか、具体的な説明を求めることも大切です。
経験豊富な弁護士であれば、過去の案件を踏まえた実践的なアドバイスや、将来起こりうる問題への予防策を提案できるはずです。
コミュニケーション能力
顧問弁護士との円滑なコミュニケーションは、長期的な関係を築く上で非常に重要です。説明のわかりやすさ、レスポンスの適切さ、コミュニケーション手段の多様性などが主なポイントとなります。
難解な法律問題をわかりやすく説明する能力は、弁護士として必須のスキルです。初回の面談や相談時に、弁護士の説明が理解しやすいかどうかを注意深く観察しましょう。また、ビジネスの現場では迅速な対応が求められることが多いため、適切なタイミングでレスポンスが返ってくるかどうかも重要です。
さらに、メール、電話、オンラインミーティングなど、多様なコミュニケーション手段に対応しているかも確認しましょう。顧問弁護士との関係は継続的なものになるため、「親身さ」も重要な要素です。単なる顧客の一社としてではなく、自社の問題に真剣に向き合ってくれる弁護士を選ぶことが大切です。
顧問料とサービス範囲
顧問料の金額だけでなく、その料金でどこまでのサービスが受けられるかを詳細に確認することが重要です。顧問料は法律事務所によって異なり、企業の規模やサービス範囲によって複数のプランが用意されていることが多いです。
一般的な相場として月額5万円程度から設定されていることが多いですが、近年では月額1万円といった低価格のプランも見られます。ただし、低価格プランの場合、顧問料の範囲内で受けられるサービスが限定されていることが多く、範囲外の依頼には追加料金が発生する可能性があります。
そのため、顧問契約を結ぶ前に、どこまでが顧問契約の範囲内として無料対応してもらえるのか、月に何回程度まで無料なのか、何を頼むと有料になるのかを具体的に確認しておくことが大切です。自社のニーズに合ったサービス範囲と、それに見合った適切な顧問料を選択することで、効果的な法務サポートを受けることができます。
専門性と対応可能な法律分野
顧問弁護士の専門性と対応可能な法律分野が、自社のニーズに合致しているかを確認することが重要です。企業法務は多岐にわたるため、契約法、労働法、知的財産法、会社法など、自社が特に注力したい分野や頻繁に直面する法律問題に精通している弁護士を選ぶことが望ましいです。
また、業界特有の法規制や慣行に詳しい弁護士であれば、より的確なアドバイスを受けられる可能性が高くなります。さらに、国際取引を行っている企業の場合は、国際法や外国の法制度に精通している弁護士が適しているでしょう。候補となる弁護士に対して、自社の事業内容や直面している法的課題を説明し、それらに対する知識や経験、対応能力を確認することが大切です。
弁護士の過去の取扱案件や、所属する弁護士会の委員会活動なども、専門性を判断する上で参考になります。
戦略的提案能力
顧問弁護士には、単に目の前の問題を解決するだけでなく、将来的なリスクを予見し、戦略的な提案ができる能力が求められます。経験豊富な弁護士であれば、現在直面している問題の根本的な原因を分析し、類似の問題が将来発生しないような予防策を提案することができます。
また、企業の成長戦略に合わせた法的アドバイスや、新規事業展開における法的リスクの分析など、経営的視点からの助言も期待できます。初回の相談時や面談時に、自社の現状や将来的な展望について説明し、それに対する弁護士の見解や提案内容を確認することで、戦略的な思考ができる弁護士かどうかを判断できます。
このような能力を持つ顧問弁護士を選ぶことで、単なる法的問題の解決だけでなく、企業の持続的な成長や競争力の強化にも貢献してもらえる可能性が高まります。
レスポンスの速さと柔軟性
ビジネスの現場では、迅速な対応が求められることが多いため、顧問弁護士のレスポンスの速さと柔軟性は非常に重要です。緊急の法的問題が発生した際に、迅速に対応してくれる弁護士を選ぶことが望ましいです。
また、通常の営業時間外や休日でも、必要に応じて対応してくれるかどうかも確認しておくとよいでしょう。ただし、レスポンスの速さだけでなく、その質も重要です。迅速な対応と同時に、十分な検討を行った上で適切なアドバイスを提供できる能力が求められます。
さらに、企業の状況や要望に応じて柔軟に対応できるかどうかも重要なポイントです。例えば、急な会議への参加や、短期間での契約書のレビューなど、様々な状況に柔軟に対応できる弁護士を選ぶことで、より効果的な法務サポートを受けることができます。
事務所の規模と体制
顧問弁護士を選ぶ際には、所属する法律事務所の規模と体制も考慮に入れる必要があります。大規模な法律事務所では、様々な専門分野の弁護士が所属しているため、幅広い法律問題に対応できる可能性が高くなります。
また、複数の弁護士で案件を共有することで、より多角的な視点からのアドバイスを受けられる可能性もあります。一方で、中小規模の事務所では、よりパーソナルな対応や、特定の分野に特化したサービスを受けられる可能性があります。自社のニーズや規模に合わせて、適切な規模と体制の事務所を選ぶことが重要です。
また、事務所のサポート体制や、ITツールの活用状況なども確認しておくとよいでしょう。例えば、オンラインでの相談対応や、セキュアなファイル共有システムの利用など、効率的かつ安全な法務サポートを受けられる体制が整っているかどうかも、選択の基準となります。
顧問弁護士の費用種類とそれぞれの相場
以下の表は、顧問弁護士の費用を細かく分けてまとめたものです。これらの費用は企業の規模、業種、契約内容、案件の複雑さなどによって変動します。顧問契約を結ぶ際には、各費用の範囲と条件を明確にしておくことが重要です。
費用項目 | 説明 | 一般的な金額の目安 |
---|---|---|
月額顧問料 | 定期的に支払う基本料金 | 中小企業:3〜5万円 大企業:10〜30万円 |
法律相談料 | 基本的な法律相談の費用 | 顧問料に含まれる場合あり 別途料金の場合あり |
個別案件の弁護士費用 | 特定の案件や訴訟に対する費用 | 案件により異なる 顧問契約で割引あり |
着手金 | 個別案件の初期費用 | 案件の規模により異なる |
報酬金(成功報酬) | 案件解決時に発生する費用 | 解決内容に応じて変動 |
実費 | 交通費、印紙代など | 実際にかかった費用 |
月額顧問料
月額顧問料は、企業が定期的に支払う基本料金です。この料金で、一定の法律相談や法務サポートを受けることができます。中小企業の場合、一般的に月額3〜5万円程度が相場となっていますが、近年では月額1万円といった低価格のプランも登場しています。
大企業の場合は、より広範囲なサービスが必要となるため、10〜30万円程度の高額になることもあります。顧問料の金額は、企業の規模や業種、必要とするサービスの範囲によって異なります。契約時には、顧問料に含まれるサービスの具体的な内容や回数を確認することが重要です。
また、顧問料の範囲を超える場合の追加料金についても、事前に明確にしておくべきです。
法律相談料
法律相談料は、顧問弁護士に法律相談を行う際に発生する費用です。多くの場合、基本的な法律相談は月額顧問料に含まれていますが、契約内容によっては別途料金が発生することもあります。
顧問契約の範囲内で無料で相談できる回数や時間が決められていることが多く、それを超える場合に追加料金が必要となります。例えば、月に2回まで無料で相談できる契約の場合、3回目以降は有料になるといった具合です。また、相談の内容や複雑さによっても料金が変わる場合があります。
法律相談料の設定は事務所によって異なるため、契約時に詳細を確認することが重要です。
個別案件の弁護士費用
個別案件の弁護士費用は、顧問契約とは別に、特定の法的問題や訴訟に対して発生する費用です。この費用は案件の内容、複雑さ、所要時間などによって大きく異なります。例えば、契約書の作成や確認、労務問題の対応、訴訟の代理などが個別案件に該当します。
顧問契約を結んでいる場合、通常よりも割引された料金で対応してもらえることが多いです。個別案件の費用は、時間制(タイムチャージ制)で計算されることもあれば、案件ごとに定額で設定されることもあります。複雑な案件の場合、着手金と成功報酬を組み合わせた料金体系が採用されることもあります。
個別案件を依頼する際は、事前に費用の見積もりを取り、支払い条件を明確にしておくことが重要です。
着手金
着手金は、個別案件を依頼する際に発生する初期費用です。弁護士が案件の調査や準備を始める際に支払う費用で、案件の難易度や予想される作業量に応じて設定されます。着手金の金額は案件の種類や規模によって大きく異なり、数万円から数百万円まで幅広く設定されることがあります。
例えば、簡単な契約書のチェックであれば数万円程度、複雑な訴訟案件であれば数十万円以上になることもあります。着手金は、案件が解決しなくても返金されないのが一般的です。ただし、顧問契約を結んでいる場合、着手金が不要または割引されることもあります。
着手金の支払いは、弁護士が本格的に案件に着手する前に行われるため、依頼内容や費用について十分に協議し、合意しておくことが重要です。
報酬金(成功報酬)
報酬金、または成功報酬は、案件が解決した際に発生する費用です。この費用は、案件の結果や解決内容に応じて金額が変動します。例えば、訴訟で勝訴した場合や、有利な和解が成立した場合などに支払われます。報酬金の計算方法は案件の種類によって異なりますが、一般的に経済的利益(勝訴や和解によって得られた金銭的利益)の一定割合で設定されることが多いです。
例えば、経済的利益の10〜20%程度が報酬金として設定されることがあります。ただし、案件の内容や難易度、所要時間などによっても変動します。報酬金は、着手金と組み合わせて設定されることが多く、着手金が低めに設定される代わりに、成功報酬が高めに設定されるといったバランス調整が行われることもあります。
実費
実費は、弁護士が案件を処理する際に実際にかかった費用のことを指します。これには、交通費、宿泊費、印紙代、郵送料、コピー代、翻訳料などが含まれます。実費は、顧問料や個別案件の弁護士費用とは別に請求されるのが一般的です。実費の金額は案件の内容や進行状況によって大きく異なります。例えば、地方裁判所での訴訟を行う場合、印紙代だけでも数万円から数十万円かかることがあります。
また、海外との取引に関する案件では、翻訳料や海外出張費用などが高額になる可能性があります。実費については、事前に概算を確認し、どのような費用が発生する可能性があるかを弁護士と相談しておくことが重要です。また、実費の請求方法(都度請求か、案件終了時の一括請求か)についても確認しておくとよいでしょう。