社外取締役の報酬相場|平均663万円の妥当性と報酬の決め方・社外取の採用方法まで

取締役_報酬

最近よく聞く機会も増えた「社外取締役」という役割ですが、会社の経営が健全にできているかを客観的な目線から監視するための重要なのはポジションです。社外取締役になる人は、元経営者や税理士・会計士資格を持つ人など、経営のノウハウや財務に詳しい人が就任することが多くなります。

このような人たちの報酬はどれくらいなのでしょうか。報酬の平均値やどのように報酬を決めているかを紹介します。

目次

社外取締役の報酬相場

社外取締役の報酬相場はどれくらいなのか紹介します。

報酬は年平均663万円

朝日新聞と東京商工リサーチが2018年4月末時点で東証1部に上場する約1,980社の社外取締役について、株主総会の資料などから社外取締役の報酬を調べています。報酬を公開している社外取締役の平均報酬は663万円でした。特に日経平均株価に採用されている上場企業225社の報酬は平均と比べても高く、報酬が判明した218社の平均は1,200万円という結果です。それ以外の東証1部は598万円なので、倍以上の差があるということが分かります。

東証1部の社外取締役の経歴は、経営者・元経営者が半分の約2,670人です。その他は弁護士が約730人、会計士・税理士が約530人で続き、官僚や日本銀行などのOBは約480人、大学教授ら学識経験者が430人でした。特筆すべきは官僚OBの平均報酬は約750万円と平均値の663万円より100万円ほど高くなっていることではないでしょうか。官僚の天下りで高報酬を得られるということが判明して、きちんと役割を果たしていれば良いですが、お飾りの「社外取締役」であれば世間から厳しい目を向けられそうです。

参照:朝日新聞デジタル|社外取締役、報酬は年平均663万円 兼務で高額報酬も

企業規模が大きくなるほど報酬は高くなる

上記の調査では、社外取締役に高額を支払っている企業についても紹介しています。高額を支払っている企業の

  • 1位が日立製作所で3,944万円
  • 2位が岩谷産業3,900万円
  • 3位が住友不動産3,225万円でした。

その他、野村ホールディングスなど17社が2,000万円を超える結果となっており、希望規模の大きな会社ほど高額の報酬を支払っているケースが多いようです。

高額を支払う理由としては、優秀な人材の確保のためと言えるのではないでしょうか。特に大企業に対する助言をできる人材は非常に少なく、一部の有識者を自分の会社の社外取締役に迎え入れようと必死です。そのため報酬額が高騰してしまうという理由があると考えられます。

参照:掛け持ち平均4社、年俸2000万円も——社外取締役バブル、コーポレートガバナンス強化で需要急増 | BUSINESS INSIDER JAPAN

海外に比べると劣る報酬水準

社外取締役は常勤取締役とは違い会社に顔を出すのは取締役会や株主総会など年に数回〜数十回程度です。それでも高額報酬を手に入れられるので羨ましく思うかもしれませんが、実は日本の社外取締役の報酬水準は海外に比べると劣るのです。

米国の社外取締役報酬は2900万円

デロイト トーマツ コンサルティングが実施する「役員報酬サーベイ2015」の調査結果によると、米国の社外取締役の平均報酬は2,900万円、英国は1,300万円程度であることがわかりました。これには、優秀な社外取締役の争奪が激化しているということに加えて、報酬の決め方の違いも関係しています。

役員報酬に加えて監査委員を兼任する

日本では「社外取締役」という役位に対して報酬額が支払われるため、指名/報酬/監査委員の兼任や、各委員会の議長ポストを兼務していても一律で報酬が支払われることが多いです。一方で米国や英国では、「社外取締役」という役位に対する報酬にプラスして、たとえば委員に就任すると追加で1 万ドルを支給、議長に就任すると追加で2万ドル支給というようベースの報酬に上乗せされていきます。

なぜ日本の社外取締役報酬はなぜ低いのか?

このように社外取締役に支払う報酬の決め方が海外と異なっていることから、日本の社外取締役に支払われる報酬は少なく抑えられています。しかし、多義に渡る社外取締役の業務で優秀な人材を確保するためには、今後の報酬アップは避けられなくなりそうです。

もともとの報酬のペースアップに加えて、海外のような明確な報酬体系を採用しポストを兼任するのであればその分も支払うというスタンスを取ることが優秀な人材確保のためには必要かもしれません。そうすることにより、仕事の領域も明確にすることができ、「この仕事内容であるならこの報酬は妥当」というような判断もしやすくなるからです。

【参照元】

社外取締役の兼任で高額報酬を得ている人もいる

社外取締役は兼任することもできるので、何社か兼任することにより高額報酬を得ている人も存在します。中には10社も掛け持ちする人もおり、その報酬は数千万円にも及ぶこともあるようです。しかし、よほどのマルチタスク人間でなければ的確な判断やアドバイスができなくなってしまいます。

いくら評判が良い人材でも、何社も兼任していていつも忙しい人材より、自分の会社をじっくり見てくれて必要な時声をかけやすい人材の方が適任の場合もあるでしょう。社外取締役を選ぶ企業は、その点もよく考えて選定することが大切です。

社外取締役の報酬の決め方

次に社外役の報酬はどのように決めているのかを紹介します。

優秀な人材の確保のため高額になる

社外取締役に求められることは、経営のアドバイスをすることにより軌道修正をしたり更に事業拡大したりするように協力することです。しかし、このようなアドバイスを的確にできる優秀な人材は非常に少ないのです。そのため、一部の優秀な人材に依頼が殺到し、取り合いとなっている現実があり、報酬は高く設定されることになります。

ただし、社外取締役の勤務が年に数回〜数十回なのにも関わらず、取締役の報酬とあまりに差が出過ぎる場合、常勤取締役の士気が落ちてしまいます。この点は配慮しながら社外取締役の報酬は決まっていきます。

日本では固定収入が多い

社外取締役に対する報酬は固定報酬であることがほとんどです。一方で米国や英国では「社外取締役が株主の代わりに取締役と企業の監督を行う」という側面から「社外取締役は、株主との利益を共有するべきである」という考えとなり、業績に連動しない形で株式報酬を支払うことが多いです。このような報酬体系であれば、社外取締役も長期的に株式の価値が上がるように、より真剣に企業の経営や財務に目を光らせることになります。

日本ではこのようなケースはほとんどありませんでしたが、2016年より武田薬品工業が社外取締役に対して業績非連動型株式報酬を付与し始めました。今後は日本でもこのように固定報酬に加えて株式報酬を支払うケースが増えていくかもしれません。

欲しい人材の経歴や実績に見合った報酬かを検討

社外取締役の報酬は一人一人の実力などで差をつけることなく一律です。どんなに集まった人材のスキルが異なっていたとしてもみんな平等に「社外取締役」としての役位に報酬を支払うことになります。

企業としてはまず「どのような人材を社外取締役として集めたいか」を考えなくてはいけません。たとえば、税理士経験がある人が欲しい、経営者として会社の舵を取っていた人が欲しいなど具体的に欲しい人材像を明らかにします。その来て欲しいと思う人材に対して見合った報酬か、欲しい人材すべてに納得してもらえる金額なのかを考えなくてはいけません。

経営者であれば、一部上場企業の経営者か中小企業の経営者かで支払うべき金額は大きく異なります。そのため、理想とする人材に支払う報酬として妥当なのかと、実際にその額を支払う余裕があるのかというバランスを考えなくてはいけないのです。

参照:これからの社外取締役の選任・処遇の在り方(2)|サービス:人事・組織コンサルティング|デロイト トーマツ グループ|Deloitte

社外取締役を掛け持ちする企業の平均数

上記では、社外取締役を兼任することで高額報酬を得ている人もいると紹介しましたが、実際にどれくらいの会社を兼任しているのでしょうか。

掛け持ち企業の平均は4社ほど

日本取締役協会は、社外取締役1人当たりの掛け持ちは「4社程度」との目安を公表しています。先ほども紹介した、朝日新聞と東京商工リサーチの調査によると、4社以上兼務する社外取締役がいるところが約300社ありました。兼務社数の最多は8社で3人、7社と6社が各4人ずつおり、各社から得られる報酬が5,000万円を超えると言うケースもあります。

参照:掛け持ち平均4社、年俸2000万円も——社外取締役バブル、コーポレートガバナンス強化で需要急増 | BUSINESS INSIDER JAPAN

的確な判断や期待された役割を果たせるかがポイント

兼任する会社は4社ほどということでしたが、社外取締役に求められる監督機能や経営に対するアドバイスなどがきちんとできなければ存在意義を疑われることになります。社外取締役が会社にかける時間は、その会社毎に異なりますが、取締役会・株主総会・入社式・セミナーでの講演など多義に渡る場合も。マルチタスクが得意で求められる役割をしっかり果たせる人であれば、多くの企業を兼任することも可能です。

しかし、企業としてもたくさんの会社を兼任しているやり手の人より、自分の会社をじっくり見てくれる人の方が適任の場合もあります。企業が社外取締役を選任するときは、「できる人だと評判が良い」などのイメージだけではなく、いかに自分の会社にとって有益かを考えて採用する必要があると言えるでしょう。

https://trient.jp/outside-director/

社外取締役の採用方法

最後に、社外取締役を採用したい場合、どのように人材を探せば良いのかを紹介します。

エグゼクティブ向けの人材紹介サービス5選

社外取締役を探すにあたり、身近に全く候補がいない場合、エグゼプティブ向けの求人サイトを利用するのが手っ取り早い場合もあります。求人サイトを使えば、その人材の学歴・経歴・実績・資格などが、自分たちの会社にとって必要なスキルを持っているかなどが一目で分かります。

何回か面接などを重ねて、条件や報酬などが合致すれば採用することができ、一から自分たちで探すより効率的に良い人材を探すことができるのです。

企業側としてはサイトに対して掲載するための手数料や、採用を決めるときに手数料を支払わなくてはいけないデメリットはありますが、自分たちが考え付かなかった人材とのマッチングも可能になります

求職者としても、自分の経歴や実績を生かせる企業をたくさんの会社から選ぶことができ、報酬や条件なども明確にされている点はメリットが大きいです。

ExE(エグゼ)

ExEは、社外役員を中心とした役員を採用したい企業とその候補者のマッチングサービスです。運営会社の株式会社Asiroは、弁護士に特化した転職サービスを展開しています。業界に精通したエージェントによるサポートが魅力です。

そうしたブランディングも相まって、候補となる人材は、弁護士を中心としたエキスパート人材が数多くいます。そのため、特に常勤監査役として弁護士などの専門人材を採用したい企業にとっては、最適なサービスです。

公式サイト:https://exe-pro.jp/

BEET-AGENT

BEET-AGENTは、管理部門・バックオフィスの人材に特化した転職エージェント・サービスです。法務、経理、人事労務などを中心に、幅広いバックグラウンドの人材が登録しています。

特に、内部監査に関する人材として、バックオフィス人材の延長として社内のガバナンス体制に課題を抱える企業に適した人材が登録しています。

公式サイト:https://beet-agent.com/

エグゼクティブ専門転職エージェント[JAC Executive]

IPO、事業承継、M&A、海外展開など、企業の抱える課題にCEO、COO、CFOなど経営者(次世代経営者)やカントリーマネージャーで応えるエグゼクティブ専門の採用エージェント。

公式サイト:http://www.jac-executive.jp/

ランスタッド

各業界にフォーカスした専任のコンサルタントが、顧客企業のニーズと候補者のキャリアを的確に分析し、ベストマッチを実現。市場価値の高い専門職や管理職レベルの正社員採用をサーチ型・登録型を融合させたハイブリッド型の支援サービスで成功に導きます。

公式サイト:https://www.randstad.co.jp/client/

ビズリーチ

「欲しい人材のことは現場が一番よく分かっている」という思いから、現場に、候補者検索からスカウト送付、初回面談実施までを一任しました。採用業務が加わることで、現場の工数増加を懸念しましたが、不満の声はほとんど上がりませんでした。

現場が人材不足で行き詰まっていたので、直接候補者を検索してアプローチできる方が効率的だと思ってくれたのだと思います。結果、導入から半年間で6ポジション、8名の採用が決定。

公式サイト:https://bizreach.biz/

ツテのある人に紹介をしてもらう

社外取締役を探しているけれど、なかなか良い人材がいない場合、すでに社外取締役を設置している経営者などに相談すると良いでしょう。そのような経営者がどのように社外取締役を見つけたかなどを聞くことで、良い人材を見つけるためのヒントを得ることができます。

また、社外取締役になるような人材は同じようなレベルの友人がたくさんいる可能性もあります。その会社が設置した社外取締役を紹介してもらい、その人の人脈の中から紹介してもらえる可能性もあります。特に経営者として活躍していたけれど今は一線を退いている人などは、これから可能性がある会社を育てたりサポートしたりしたいと思っていることが多いです。

このような人はチャンスさえあれば力になりたいと考えているので、社外取締役を探しているということをいろんな人に言っておくと、「力になりたい」という人材が舞い込む可能性も高くなります。

セミナーや異業者交流会でスカウト

ベンチャー企業などまだ経営者の年齢が若く、ツテもあまりないという場合は、経営者同士の集まりや異業種交流会などに積極的に参加して適任だと思われる人をスカウトすることも一つの手です。

あるベンチャー企業の経営者は、セミナーで出会った退職直前の大手企業の支社長を務めた人材に目をつけました。会食などを重ねて最初は経営のノウハウなどを教えてもらっていましたが、経営者の熱意やその会社が持つ技術にその支社長は感心し、「社外取締役になって欲しい」と依頼したところ承諾を得られたというエピソードもあります。

この支社長が務めていた大企業は日本でも名だたる総合商社で、経営者も創業1年ほどのベンチャー企業に来てもらえるとは思っていなかったようです。しかし、熱意やその会社のポテンシャルを評価されればこのような人材に社外取締役になってもらえる可能性もあるのです。

このようなケースもあるので、ツテがなくても積極的に良い人材が集まる場所に出向き、良い人材に積極的にアプローチすることも大切と言えるでしょう。

まとめ

社外取締役に対する報酬は一社あたり663万円ほどと高水準です。しかも、兼任する社外取締役も多く、平均4社ほどを兼任しているようです。そうなると社外取締役としての報酬は2,000万円を超えることもあり、かなりの高額を得ている社外取締役も多いです。

現状海外の水準と比べると日本の社外取締役の報酬は劣りますが、良い人材の争奪のために報酬額は引き上がる可能性も高いでしょう。引き受ける取締役としては、その報酬に見合った仕事を遂行できるかをよく考えて引き受ける必要があります。採用するに企業としては、良い人材だと評判だけど忙しい人よりも、自分たちの会社についてじっくり考えてくれる人材を採用した方が良いでしょう。

適任の社外取締役を探すためには求職サイトを使ったり、紹介・スカウトをしたりなどさまざまな方法があります。企業としては高額報酬を支払うことになるので、「働きぶりが報酬に見合わない」などと後悔がないように、慎重に選ぶようにしてください。

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