IT法務に強い弁護士・法律事務所とは?選び方や特徴・おすすめの弁護士検索サイト

IT法務に強い弁護士

IT法務とは、情報技術(IT)に関連する法的問題や課題に対応する専門分野です。主に、ITサービスやシステム開発、デジタル製品に関わる法務全般を扱います。

IT法務の主な業務には以下のようなものがあります。

  1. 契約書の作成・レビュー:システム開発や利用規約などの契約書を作成し、法的リスクを最小限に抑えます。
  2. 知的財産権の管理:ソフトウェアやデジタルコンテンツの著作権、特許権などを保護します。
  3. 個人情報保護:データ保護法に準拠したプライバシーポリシーの策定や、情報セキュリティ対策を行います。
  4. コンプライアンス対応:IT関連法規制への遵守を確保し、企業のリスク管理を支援します。
  5. 紛争解決:システム開発トラブルやサイバー攻撃などの問題に対処します。

IT法務の専門家は、常に進化する技術と法律の両方に精通している必要があります。彼らは、企業がデジタル時代の法的課題に効果的に対応し、イノベーションを推進しながらもコンプライアンスを維持できるよう支援します。

本記事ではIT法務に強みをもつ弁護士・法律事務所の特徴や選び方、依頼時の弁護士費用などをご紹介します。

目次

IT関連の法務に強い弁護士の特徴7つ

IT関連の法務に強い弁護士の特徴を7つ挙げ、それぞれ解説いたします。

技術的知識と理解力

IT法務に強い弁護士は、ITやシステム開発に関する基本的な知識を持っています。ブロックチェーン、AI、クラウドサービスなどの最新技術についても理解があり、これらの技術が法的にどのような影響を与えるかを把握しています。

例えば、システム開発の流れやプロジェクト管理の基本を理解していることで、開発に関する紛争が発生した際に、問題の本質を素早く把握し、適切な対応策を提案することができます。

IT業界・技術への迅速な対応力

IT業界は日進月歩で変化が激しいため、IT法務に強い弁護士には迅速な対応力が求められます。新しいビジネスモデルや技術が次々と登場する中、法的リスクを素早く分析し、クライアントに適切なアドバイスを提供する必要があります。

また、IT企業は一般的にスピードを重視した経営を行っているため、法務面でも迅速な対応が期待されます。

柔軟な思考力と創造性

IT法務では、既存の法律や判例だけでは対応できない新しい問題に直面することが多々あります。そのため、柔軟な思考力と創造性を持ち、前例のない事案に対しても適切な法的解釈や対応策を考え出す能力が重要です。

例えば、新しいデジタルサービスの適法性を判断する際には、既存の法律を柔軟に解釈し、クライアントのビジネスモデルに適した形で法的リスクを最小限に抑える方法を提案することが求められます。

コミュニケーション能力

IT法務に強い弁護士は、技術者や経営者など、様々な背景を持つ人々とコミュニケーションを取る必要があります。複雑な法的概念を、技術的な知識を持たない人にも分かりやすく説明する能力が求められます。

また、クライアントのビジネスニーズを正確に理解し、それに合わせた法的アドバイスを提供することも重要です。

継続的な学習意欲

IT業界は常に進化しているため、IT法務に強い弁護士には継続的な学習意欲が不可欠です。新しい技術やビジネスモデルについて常にアップデートし、それらが法的にどのような影響を与えるかを研究し続ける必要があります。

例えば、AIやブロックチェーンなどの新技術が登場した際には、それらの技術の仕組みや特性を理解し、既存の法律との整合性や新たな法的課題について検討する必要があります。

多角的な視点

IT法務は、知的財産権、個人情報保護、セキュリティ、労働法など、多岐にわたる法律分野と関連しています。そのため、IT法務に強い弁護士は、特定の法律分野だけでなく、幅広い法律知識を持ち、多角的な視点からクライアントの問題を分析する能力が求められます。

例えば、新しいITサービスを立ち上げる際には、知的財産権の保護、個人情報の取り扱い、労働法上の問題など、様々な側面から法的リスクを評価し、総合的なアドバイスを提供する必要があります。

ビジネス感覚

IT法務に強い弁護士は、単に法律知識を持っているだけでなく、クライアントのビジネスを理解し、法的リスクを最小限に抑えながらビジネスの成長を支援する能力が求められます。

保守的な意見を述べるだけでなく、クライアントのビジネス目標を達成するための建設的な提案ができることが重要です。例えば、新規サービスの立ち上げ時には、法的リスクを指摘するだけでなく、そのリスクを軽減しつつビジネスを前に進めるための具体的な方策を提案することが期待されます。

IT法務に強い弁護士の選び方と評価ポイント

IT法務に強い弁護士を選ぶ際のポイントは以下の5つです。

IT分野への深い理解

単に法律知識だけでなく、情報システムの構造、ソフトウェア開発、ネットワーク、クラウド、AI等、ITに関する深い知識を有していることが重要です。

技術的な背景を理解しているからこそ、法的リスクの本質を見抜き、実効的な対策を講じることができます。技術的な専門用語や業界特有の慣習にも精通しているため、スムーズなコミュニケーションが期待できます。

また、過去の成功事例や、技術的な内容に関する質問をすることで、弁護士の理解度を測ることが可能です。

例えば、「○○社のクラウドサービスを利用していますが、データ管理における法的な注意点は何ですか?」といった具体的な質問を投げかけてみましょう。技術的な内容を分かりやすく説明できるかどうかも、判断材料となります。表面的ではない、本質的な理解を持つ弁護士を選びましょう。

IT法務の経験と実績

過去にどのようなIT関連の法務案件を手がけてきたのか、その経験と実績を確認しましょう。データ漏洩、システム障害、知的財産権侵害、契約紛争、不正アクセス、インターネット上の誹謗中傷など、具体的な事例を尋ねることが有効です。

類似の案件で成功実績があれば、安心して依頼できるでしょう。Webサイトの事例紹介や講演実績なども参考になります。ただし、単に件数をこなしているだけでなく、複雑で困難な案件を解決に導いた経験があるかどうかも重要です。

また、特定の業界や技術に特化した経験を持つ弁護士も存在します。自社の事業内容や抱える課題に合致した経験を持つ弁護士を選ぶことで、より的確なアドバイスやサポートが期待できます。

弁護士としての参考経歴

一例ですが、企業法務弁護士ナビという、IT法務関連に強い弁護士を探せるポータルサイトに掲載している『弁護士法人内田・鮫島法律事務所』の高瀬弁護士は、下記のような対応をされています。

https://houmu-pro.com/offices/tokyo/182/
対応内容(一部)

弁護士 高瀬は多くのIT関連企業様を顧問にもち、様々なご相談に対応してまいりました。法務に関するお悩みは、企業様や状況によって様々になりますので、ご提案できる解決方法も事案により千差万別でございます。

弁護士 高瀬はこれまでの経験やノウハウを活用しながら企業様に寄り添い、より良い解決を目指し、対応策をご提案することを心がけております。

契約書の作成・チェックなどの事前にトラブルを回避するためのサポートに関しても、企業の要望に合わせて、スピード感をもって対応し、企業の状況に合わせて柔軟に対応させて頂きます。

その他、たとえば新サービスの法令適合性に関しては、弁護士にご相談いただくことで、白黒はっきりしなかったものが白か黒かわかったり、仮に黒である場合にはどのようにすれば白に近づけることが可能かがわかります。

実際のサービススキームに即して、ビジネスとしての魅力を失わせることなく、「白」に近づけていけるか、お客様とともに考えます。

企業間で紛争になってしまった際には、今後の予想などをしっかりとお伝えしながら、依頼者の意向に沿って交渉、訴訟代理等の対応を進めます。
引用元:https://houmu-pro.com/offices/tokyo/182/

IT分野の最新動向に対する感度

IT分野は技術革新が非常に速いため、関連法規制や判例も常に変化しています。最新の動向にアンテナを張り、積極的に情報収集を行っている弁護士を選びましょう

セミナー参加、論文発表、業界団体への所属などが、その指標となります。特に、GDPR、改正個人情報保護法、サイバーセキュリティ基本法など、IT法務に関わる重要な法規制の改正には常に注意が必要です。

また、AI、IoT、ブロックチェーンといった新しい技術に関する法的課題への理解も求められます。弁護士のブログやSNSでの発信内容も、最新動向への感度を知る上で参考になります。

技術の進展に伴い、新たな法的リスクも生まれるため、常に学び続ける姿勢を持つ弁護士を選ぶことが重要です。

相性・コミュニケーション

技術的な内容や法律用語を分かりやすく説明してくれるコミュニケーション能力は非常に重要です。弁護士との意思疎通がスムーズに行えるかどうかは、問題解決のスピードや結果に大きく影響します。

専門用語を並べるだけでなく、依頼者の疑問や不安に寄り添い、丁寧な説明を心がけてくれる弁護士を選びましょう。質問しやすい雰囲気を持っているかどうかも確認したいポイントです。

初回相談などで、難しい内容を具体例を用いて分かりやすく説明してくれるか、こちらの質問に対して丁寧に答えてくれるかなどを確認しましょう。一方的な説明ではなく、双方向のコミュニケーションを重視する弁護士が望ましいです。

専門家ネットワーク

IT法務は、技術的な専門知識が必要となる場面が多々あります。そのため、ITエンジニア、フォレンジック専門家、セキュリティコンサルタントなど、様々な分野の専門家とのネットワークを持っている弁護士は、より多角的な視点から問題解決に取り組むことができます。

必要に応じて、外部の専門家と連携し、最適なソリューションを提供できる体制が整っているか確認しましょう。例えば、システム障害の原因究明やデータ復旧が必要な場合、技術的な専門家との連携が不可欠となります。

弁護士自身が技術的な知識を全て持っている必要はありませんが、適切な専門家と連携できる能力は、IT法務において非常に重要となります。

IT法務に強い弁護士に相談できること

IT法務に強い弁護士へ相談できる内容(弁護士が提供するサービス)について解説いたします。

システム開発契約のサポート

弁護士は、システム開発に関する契約書の作成や交渉をサポートします。要件定義、納期、仕様変更時の対応など、重要な点を明確に定めた契約書を作成します。

また、多段階契約や再見積もりの必要性についてもアドバイスを行い、トラブルを未然に防ぐための条項を盛り込みます。開発の各段階で生じる法的リスクを分析し、クライアントの利益を守るための適切な条件を提案します。

ウェブサービスの利用規約作成

弁護士は、ウェブサービスの利用規約やプライバシーポリシーの作成・レビューを行います。サービスの特性に応じて、ユーザーの権利と義務を明確に定め、事業者の責任範囲を適切に設定します。

個人情報保護法やGDPRなどの関連法規に準拠した内容を盛り込み、法的リスクを最小限に抑えつつ、サービスを効果的に提供するための規約を作成します。また、定期的な見直しや法改正への対応も行います。

知的財産権の管理と保護

弁護士は、ソフトウェアやデジタルコンテンツの著作権、特許権などの知的財産権の管理と保護をサポートします。職務著作や著作権の共有、ライセンス契約など、IT業界特有の知的財産権の問題に対応します。

また、他社の知的財産権を侵害しないようなアドバイスや、自社の知的財産権が侵害された場合の対応策を提案します。オープンソースソフトウェアの利用に関する法的リスクの分析も行います。

新規ITビジネスの法的スキーム構築

弁護士は、新しいITビジネスモデルの法的スキームを構築します。事業の適法性をチェックし、必要な許認可の取得をサポートします。また、法律との抵触がないか、規制当局への対応が必要かなどを検討し、適切なアドバイスを提供します。

場合によっては、行政機関へのノーアクションレターの作成も行います。新技術を活用したビジネスの法的リスクを分析し、適切な対策を提案します。

ノーアクションレター(No Action Letter)とは、特に金融・証券取引などの分野で使用される規制関連の文書の一種で、ある活動や取引が規制当局のルールに違反しないことを確認するために使用されます。この文書は、企業や個人が特定の行動を取る前に、規制当局から正式な「異議なし」の立場を確認するために申請するものです。
[参照]
法務省|法令解釈に係る照会手続(ノーアクションレター制度ほか)
手続対象法律及び所管部署一覧(令和4年8月1日現在)(EXCEL:16KB)

個人情報保護とデータセキュリティ対策

弁護士は、個人情報保護法やGDPRなどのデータ保護法に準拠したプライバシーポリシーの策定や、情報セキュリティ対策の法的側面をサポートします。

データの収集、利用、保管、廃棄に関する適切な手順を確立し、個人情報漏洩時の対応計画を策定します。また、AIやビッグデータの利用に関する法的リスクの分析や、データの権利関係の整理も行います。

GDPR(General Data Protection Regulation)とは、欧州連合(EU)における個人データの保護とプライバシーを規定する法律です。日本語では「一般データ保護規則」と訳されることが多く、2018年5月25日に施行されました。[参照]個人情報保護委員会|EU(外国制度)GDPR(General Data Protection Regulation:一般データ保護規則)

IT紛争の解決支援

弁護士は、システム開発トラブルやサイバー攻撃、情報漏洩など、IT関連の紛争解決をサポートします。紛争の初期段階から関与し、交渉や調停、訴訟などの適切な解決手段を提案します。

また、システム障害やデータ消失による損害賠償請求への対応、契約解除の是非の判断なども行います。IT特有の技術的問題を法的に評価し、適切な解決策を提示します。

IT企業の労務問題対応

弁護士は、IT業界特有の労務問題に対応します。過重労働による精神疾患、年俸制と時間外労働の問題、転職や退職後の競業避止義務など、IT業界特有の課題に関するアドバイスを提供します。

また、情報セキュリティに関する従業員教育や、ソーシャルメディア利用に関する社内規定の整備なども支援します。労働法とIT業界の特性を理解した上で、適切な労務管理体制の構築をサポートします。

ITサービス関連でよく起こる法的問題及び事例と弁護士の必要性について

IT・インターネットサービス分野では、データ漏洩、著作権侵害、名誉毀損、景品表示法・特定商取引法違反などが頻繁に発生します。

弁護士がいることで些細な疑問や懸念事項にも対応でき、問題の深刻化を防ぎます。これらの予防法務は、将来的な訴訟リスクや損害賠償のリスクを低減し、事業の安定的な成長を支える上で不可欠な取り組みといって良いでしょう。

データ漏洩

顧客情報、取引情報、開発データ等の機密情報が、不正アクセス、内部不正、システム脆弱性、人的ミス等により外部に漏洩する事態です。個人情報保護法や関連法規により、企業は安全管理措置を講じる義務を負い、漏洩発生時には報告義務や二次被害防止措置が求められます。損害賠償請求や行政処分、企業イメージの低下に繋がる重大な問題です。

弁護士に事前に相談していた場合、個人情報保護方針やプライバシーポリシーの策定・レビュー、情報管理規程の整備、従業員への研修実施、セキュリティ対策の法的側面からのアドバイスを行います。

また、インシデント発生時の対応計画策定や、委託先管理に関する契約条項の整備も重要です。定期的なリスク評価に基づいた対策を支援します。

事例:LINEヤフーの情報漏洩

2023年、LINEヤフー株式会社で大規模な情報漏洩が発生。ユーザー情報や従業員情報など、最大で約47万件の個人情報が流出した可能性があると発表されました。原因は、委託先の海外企業における不正アクセスとされています。

この事件は、個人情報保護法の観点から企業の安全管理措置の不備が問われるとともに、委託先管理の重要性を改めて浮き彫りにしました。多岐にわたる情報が漏洩した可能性があり、ユーザーへの丁寧な説明と再発防止策の徹底が求められています。個人情報保護委員会の調査も入り、今後の行政処分や損害賠償請求訴訟に発展する可能性もあります。

著作権侵害

他者の著作物を無断で複製、改変、公衆送信等する行為です。インターネット上では、画像、動画、音楽、文章、プログラムなど、様々なコンテンツが無断利用されるリスクがあります。

著作権者からの差止請求や損害賠償請求の対象となり、刑事責任を問われる可能性もあります。プラットフォーム事業者においては、ユーザーによる著作権侵害行為への対応も求められます。

弁護士による予防法務としては、自社で利用するコンテンツの権利処理に関するアドバイス、利用規約における著作権に関する規定の整備、ユーザーによる侵害行為に対する削除ガイドラインの策定、著作権侵害を監視する体制構築の支援を行います。

また、他社からの指摘があった場合の対応についてもサポートします。

事例:漫画村事件

2017年頃から問題となった海賊版サイト「漫画村」事件。人気漫画を無断で掲載し、広告収入を得ていたとして運営者らが逮捕されました。この事件は、インターネット上における著作権侵害の深刻さを社会に広く認識させました。

出版社や漫画家は大きな経済的打撃を受け、コンテンツビジネスのあり方が問われるきっかけとなりました。著作権法違反だけでなく、組織的な犯罪としての側面も指摘され、海賊版サイト対策の強化や著作権保護の重要性が改めて認識されました。損害賠償請求訴訟も提起され、高額な賠償命令が下されています。

名誉毀損・誹謗中傷

インターネット掲示板、SNS、レビューサイト等において、事実無根の誹謗中傷やプライバシー侵害にあたる情報が書き込まれ、個人の名誉や信用を毀損する行為です。

投稿者に対する損害賠償請求や削除請求が可能ですが、発信者情報開示請求訴訟が必要となる場合もあります。企業に対する風評被害も深刻な問題です。

弁護士に相談した場合、利用規約における禁止事項の明確化、投稿監視体制の構築、削除ガイドラインの策定、通報窓口の設置を支援します。また、風評被害が発生した場合の法的対応(削除請求、発信者情報開示請求等)についてアドバイスを行います。

事例:木村花さんへの誹謗中傷事件

リアリティ番組に出演していたプロレスラーの木村花さんが、SNSでの誹謗中傷が原因で自ら命を絶った事件。この事件は、インターネット上での匿名性による誹謗中傷の深刻さを社会に突きつけました。

投稿者を特定し損害賠償を求める訴訟が相次ぎ、侮辱罪の厳罰化にも繋がりました。匿名であっても発信者情報開示請求によって個人が特定されること、誹謗中傷が人の命を奪うほどの深刻な行為であることを改めて認識させました。

景品表示法・特定商取引法違反

インターネット広告やECサイトにおいて、実際の商品やサービスよりも著しく優良であると誤認させる優良誤)や、有利であると誤認させる有利誤認を行う景品表示法違反、クーリングオフに関する記載義務違反、誇大広告等の特定商取引法違反など、様々なトラブルが考えられます。

悪質な場合は消費者庁からの措置命令や課徴金納付命令の対象となりますので、弁護士に事前に相談できれば、広告表示やECサイトの記載内容について、景品表示法や特定商取引法に抵触するリスクがないかリーガルチェックを行ってくれます。

根拠となるデータの確認、有利表示における比較対象の妥当性、重要事項の表示方法などについてアドバイスを行います。消費者とのトラブルを未然に防ぐための規約整備も重要です。

事例:Sirokane Beauty(旧SIXPAD)の二重価格表示

MTG社の美容機器「Sirokane Beauty(旧SIXPAD)」において、実際には販売実績のない価格を「メーカー希望小売価格」と表示し、大幅な割引表示を行う二重価格表示が行われていたとして、消費者庁から景品表示法違反で措置命令を受けました。

この事例は、消費者を誤認させる不当な表示が依然として行われていることを示しました。企業は、割引率を強調するために実際とは異なる価格を表示することがありますが、消費者の適正な商品選択を阻害する行為として厳しく規制されています。再発防止策の徹底と、消費者への正確な情報提供が求められます。

利用規約・契約関連のトラブル

サービス提供者と利用者間の権利義務を定める利用規約や、業務委託契約、ライセンス契約等において、解釈の相違、契約不履行、責任範囲の不明確さなどが原因でトラブルが発生します。サービス停止、損害賠償請求、訴訟などに発展する可能性があります。

弁護士は、利用規約や各種契約書の作成・レビューを行い、法的リスクを最小限に抑える条項を盛り込みます。

責任制限、免責事項、紛争解決条項、知的財産権の帰属など、重要な条項について丁寧に検討します。また、契約交渉の段階から関与し、法的な観点からアドバイスを行うことで、将来的なトラブルを予防します。

事例:ZOOMの利用規約変更によるプライバシー問題

Web会議サービス「ZOOM」が、AI機能に関する利用規約を変更した際、ユーザーの会話内容やデータがAIの学習に利用される可能性があると解釈され、プライバシー侵害の懸念が広がりました

この問題は、利用規約の内容がユーザーに十分に理解されないまま変更されることの課題を浮き彫りにしました。多くのユーザーが反発し、ZOOM側は規約を修正する事態となりました。サービスの利便性とプライバシー保護のバランス、利用規約の透明性と分かりやすさが重要であることが改めて認識されました。

IT法務に関する弁護士の相談料・着手金・顧問料の相場

次に、IT法務に強い弁護士の弁護士費用について、主な種類と相場を解説します。

費用項目説明相場
法律相談料弁護士に法律相談をする際に支払う費用です。初回相談は無料としている弁護士事務所も多いです。1時間あたり1万円~5万円
着手金事件の依頼時に支払う費用です。事案の難易度や予想される作業量、事件処理にかかる時間や労力によって金額が変動します。・30万円~100万円
・請求額の4%〜10%程度
報酬金事件が終結した際に支払う費用で、事件の結果や達成できた成果に応じて金額が変わります。経済的利益の6%~20%
顧問料顧問契約を締結した場合に支払う費用です。顧問契約の内容によって金額が大きく異なります。月額3万円~10万円
その他日当:弁護士が裁判所や相手方との打ち合わせ等で拘束される場合に支払う費用です。拘束時間によって金額が異なります。半日:3万円~5万円、1日:5万円~10万円
実費:裁判所に納める印紙代や郵送費、交通費などの費用です。実費

法律相談料:1時間あたり5,000円〜50,000円

IT法務に関する初期相談や簡単な質問に対する費用です。多くの事務所では30分から1時間単位で料金を設定しています。複雑な案件や専門性の高い相談では、より高額になる傾向があります。

また、法律相談料について日本弁護士連合会が実施したアンケート調査によると、顧問契約がない場合の相談料は、弁護士によって、5千円(10.5%)、1万円(43.8%)、2万円(18.8%)、3万円(15.5%)、4万円(3.3%)、5万円(4.9%)程度請求されることがあるようです。
参考:特殊専門的分野の相談1時間あたりの相談料はいくらか?|弁護士報酬について|ひまわりほっとダイヤル

着手金相場:30万円〜100万円または請求額の4%〜10%程度

案件を受任する際に支払う初期費用です。IT関連の案件では、システム開発や知的財産権など、案件の複雑さや規模によって大きく変動します。高度な専門知識が必要な場合は高額になることがあります。

契約書作成やレビュー、法律調査など、具体的な法務サービスに対する単発の費用であれば1件あたり5万円〜50万円です。です。IT分野では、システム開発契約や利用規約の作成など、専門性の高い業務が多いため、一般的な法務より高額になることがあります。

報酬金:経済的利益の4%〜20%程度

案件が成功裏に終わった際に支払う成功報酬です。IT訴訟や契約交渉などで得られた経済的利益に応じて計算されます。利益額が大きくなるほど、料率は低くなる傾向があります。

上記はあくまでも一般的な相場であり、弁護士事務所や事案の内容によって大きく異なる可能性があります。 例えば、IT・知財関連法務に強い弁護士法人内田・鮫島法律事務所では、報酬金を下記のように設定しています。

準的なタイムチャージは、下記になります。

シニアパートナー49,800円/時間(消費税10%込み:54,780円/時間)
パートナー37,800円/時間(消費税10%込み:41,580円/時間)
~49,800円/時間(消費税10%込み:54,780円/時間)
カウンセル31,800円/時間(消費税10%込み:34,980円/時間)
~49,800円/時間(消費税10%込み:54,780円/時間)
シニアアソシエイト34,800円/時間(消費税10%込み:38,280円/時間)
アソシエイト28,800円/時間(消費税10%込み:31,680円/時間)
~31,800円/時間(消費税10%込み:34,980円/時間)
ジュニアアソシエイト25,800円/時間(消費税10%込み:28,380円/時間)
弁理士21,600円/時間(消費税10%込み:23,760円/時間)
~25,800円/時間(消費税10%込み:28,380円/時間)
パラリーガル16,800円/時間(消費税10%込み:18,480円/時間)
出典:https://www.uslf.jp/price

顧問料相場:月額3万円〜30万円程度

定期的な法務サポートを受けるための月額費用です。IT企業向けの顧問サービスでは、契約書のチェックや法律相談の他、新規サービスの法的リスク分析なども含まれることがあります。企業規模や相談頻度によって料金が変動します。

IT法務に強い弁護士を探せるおすすめの相談窓口・ポータルサイト5つ

企業法務弁護士ナビ

企業法務弁護士ナビ
公式サイト:https://houmu-pro.com/

企業法務弁護士ナビは、企業法務に強い弁護士・法律事務所に相談できるポータルサイトです。 契約書の作成・チェック、知的財産権など、企業が抱える様々な法的問題に対応する弁護士を紹介しています。  

特徴
  • 企業法務に特化: 企業法務に精通した弁護士を専門に紹介しており、企業のニーズに合った弁護士を見つけやすい
  • 専門分野: 契約書、労務問題、知的財産権など、企業法務の様々な分野に対応する弁護士を掲載
  • 地域別検索: 全国各地の弁護士を掲載しており、地域から弁護士を探すことができる
  • 事務所情報: 弁護士事務所のプロフィールや費用などを掲載しており、弁護士事務所選びの参考に
  • コラム: 企業法務に関するコラムを掲載しており、企業法務の基礎知識を学べる

公式サイト:https://houmu-pro.com/

ベンナビIT

ベンナビIT
公式サイト:https://itbengo-pro.com/offices/ithoumu/

ベンナビITは、IT・ネット問題に強い弁護士を専門に紹介するポータルサイトです。 国内最大級の法律相談サイトとして、名誉棄損や誹謗中傷、発信者情報開示請求など、様々なネット関連トラブルに対応する弁護士を掲載しています。

特徴
  • IT法務に特化した弁護士検索: 弁護士の専門分野から絞り込むことができ、IT法務に精通した弁護士を見つけやすい
  • 豊富な情報: 弁護士のプロフィールや解決事例、費用などを掲載しており、弁護士選びの参考になる情報が充実
  • 法律コラム: 様々な法律問題に関するコラムを掲載しており、法律知識を深めることができます。
  • 全国対応: 東京、大阪、福岡など、全国の弁護士を掲載しており、地域から弁護士を探すことも可能
  • 土日祝日・夜間対応: 土日祝日や夜間でも対応可能な弁護士を掲載
  • 相談方法の選択肢: 電話、メールなど、複数の相談方法から選べる

公式サイト:https://itbengo-pro.com/

弁護士ドットコム

弁護士ドットコム
公式サイト:https://www.bengo4.com/

弁護士ドットコムは、法律に関する総合的な情報提供を行うポータルサイトです。弁護士検索だけでなく、法律相談、法律コラム、Q&Aフォーラムなど、様々なコンテンツを提供しています。  

特徴
  • 豊富な弁護士情報: 多くの弁護士が登録しており、様々な分野の弁護士から探せる
  • 充実した検索機能: 専門分野、地域、所属弁護士会など、様々な条件で弁護士を検索できる
  • 法律相談: 電話やメールで弁護士に法律相談が可能
  • Q&Aフォーラム: 法律に関する質問を投稿したり、他のユーザーの質問と回答を見ることが可能

ココナラ法律相談

公式サイト:https://legal.coconala.com/

ココナラ法律相談は、スキルマーケット「ココナラ」が運営する法律相談サービスです。 IT法務を含む様々な分野の弁護士に、オンラインで相談することができます。  

特徴
  • オンライン相談: 電話やビデオ通話で弁護士に相談できるため、場所を選ばずに相談できる
  • 明確な料金体系: 相談料は事前に提示されているため、安心して利用できる
  • 弁護士の評価: 他のユーザーの評価を参考に、弁護士を選べる
  • 多様な相談方法: メールやチャットでの相談も可能
  • 初回相談無料: 一部の弁護士は初回相談を無料

日本弁護士連合会

日本弁護士連合会
公式サイト:https://www.nichibenren.or.jp/

日本弁護士連合会(日弁連)は、全国の弁護士会を統括する団体です。弁護士検索サービスを提供しており、所属弁護士会や専門分野から弁護士を探すことができます。  

  • 公的な機関: 信頼性の高い情報を得ることができます。
  • 弁護士情報: 弁護士の基本情報(氏名、所属弁護士会、登録番号など)を検索できます。
  • 専門分野検索: 弁護士の専門分野から絞り込むことができます。
  • 所属弁護士会検索: 全国各地の弁護士会から弁護士を探すことができます。
  • 弁護士紹介: 各弁護士会の弁護士紹介サービスにアクセスすることができます。

上記以外にも、各ポータルサイトはそれぞれ独自の強みを持っています。複数のサイトを比較検討し、ご自身のニーズに合ったサイトを利用することが重要です。

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