社外取締役という言葉は聞いたことがあっても、「どのような仕事をしているのか」や「どうすれば社外取締役になれるか」を具体的に説明できる人は少ないのではないでしょうか。その名の通り会社の中から選ばれた取締役ではないという事は分かりますが、なるための要件などはどうなっているのか気になりますよね。
今回の記事では、社外取締役の役割や仕事内容、報酬やなるための方法などを紹介します。
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社外取締役とは|どのような役割を持つ立場の人か
社外取締役とは具体的にどんなことをする役割なのでしょうか。
経営について客観的に意見する
経営について考えた時に、社内の人間だけだとアイディアが少なかったり、偏った考え方になってしまったりすることがあります。それは、みんなで一つの方向を見て走っているからで、みんなで同じような考えやスキルの元であれば仕方がないことでもあります。
そんな中、社外取締役として今まで何も関与して来なかった人が、客観的にその会社について意見してくれれば、弱いところを強化できたり、無駄が省けたりする可能性があります。このように会社内の偏った考え方や「こうするしかない」という先入観を違う視点やスキルを持った社外取締役から教えてもらえることは、非常に会社にとってもメリットがあることなのです。
イエスマンでは務まらない
社内の人間は、経営者が「こうしたい」というビジョンについて「反対して経営者の気分を損ねたらポジションを外されるかも」という恐怖感からイエスマンになってしまうことが多いです。しかし、経営者としても社内がイエスマンだらけだと自分の決断に自信がなくなってしまうので、ダメな時はダメだとハッキリ言ってくれる社外取締役の存在は大きいものです。経営者の顔色を伺うことなく、会社にとって良いこと悪いことをきちんと発言できるような人にしか社外取締役は務まりません。
監督機能強化で株主を守る
たとえば会社が粉飾決算を行っていた場合、このことが発覚して会社の信頼が失われたら株価が暴落する可能性もあります。そうなれば、株主は大切な財産を失うことになります。また、株主にそっぽ向かれれば資金調達できなくなり、会社としての存続にも影響します。
そんなことにならないように、社外取締役は経営者や経営陣に対する監督機能を強化することにより、間違った道に進まないように方向修正する役割を求められるのです。そして、きちんと監督責任を果たすことで株主を守ることができるので、株主にとっても信頼できる社外取締役の存在が必要なのです。
実績ある経営者が経営ノウハウを伝授
社外取締役は元経営者など経営ノウハウがある人がなることも多く、社歴が短く経験値があまりない会社に、自分が培ってきたノウハウを伝授するということもあります。たとえば、引退した経営者が最近起業した勢いはあるけれど財務知識や法知識に弱いベンチャー企業の社外取締役となり、経営の基礎を教えるということもよくある話です。
また、営業センスが良くどんどん起業規模を拡大させることが得意な経営者に対して、赤字体質からの脱却を目指す企業が社外取締役を依頼するケースもあるでしょう。このように自分に足りなかったり、苦手だったりするところを補ったりするために、実績のある人材を社外取締役として迎えるケースも多いのです。
社外取締役が必要になるシーンとは
社外取締役の役割はわかりましたが、どんな会社に必要になるのでしょうか。
上場企業は社外取締役の設置が必須
2015年から施行された「コーポレートガバナンスコード」により、東証1部及び2部上場企業は独立社外取締役2名以上の設置が必須になりました。この結果、東証1部上場会社の内、社外取締役を2名以上選任している比率は、2014年が21.5%であったのに対し、2018年には91.3%にまで増えています。
参考:JPX|東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況(2019年8月1日)
しかし、コーポレートガバナンスコードはあくまで東京証券取引所内のルールであり、守らなくても罰せされることはありませんでした。しかし、2019年10月に会社法改正案を閣議決定がされ、2020年からは法令上も社外取締役の設置が必須となります。
独立社外取締役の役割とは
独立社外取締役は、取締役会における議論に積極的に貢献するとの観点から、独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催するなど、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図るべきであるとされており、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードによれば、下記の役割を定めています。
【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】
上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待されることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。
(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと
(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督を行うこと
(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること
(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること
引用元:コーポレートガバナンス・コード - 東京証券取引所
株式上場を目指す会社
上記の通り、会社法改正により社外取締役設置が必須となる見込みです。そのため上場審査においては、上場決定前から社外取締役の設置または設置計画を固める必要が出てくると思われます。このため、株式上場を目指す会社はあらかじめ社外取締役の設置をしておいた方が良いでしょう。
ベンチャーキャピタルなど外部から出資を受けた場合
ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合は、ベンチャーキャピタル側の思惑と現経営陣の思惑の調整のため、ベンチャーキャピタル側から社外取締役が派遣されることがあります。ベンチャーキャピタルは、出資をしている企業の株価が上場時に値上がることで利益を得ることができるので、社外取締役になれば熱意を持ってアドバイスをしてくれることが多いようです。
社外取締役の仕事内容
次に社外取締役の具体的な仕事内容について説明します。
取締役会への参加
社外取締役は月に1回、2〜3時間程度の取締役会への参加が最も大切な仕事となります。この取締役会は会社としての方向性を経営陣で決めていく会議であるため、ここでの社外取締役の発言は注目の的となるのです。もちろん、ただ参加するだけではなく事前に資料などを読み込み、どんなアドバイスや質問をしようかということを考える必要があります。
コーポレートガバナンス(企業統治)の実現
法令・常識・ルールを守った企業経営を実現させるためには、取締役会やその他の会議に出席し、常勤取締役の監視をすることがメインとなります。常勤取締役は会社の利益を求めすぎるあまり、不正を測ってしまうこともあります。
特に株価を暴落させたくない、銀行からの融資を止められたくないという思いから粉飾決算をしてしまう企業も少なくはありません。このように、常勤取締役が不正に走ることで株主に損失を与えないためにも、社外取締役が厳しい目で監視することが大切なのです。
客観的目線からの経営助言
社外取締役は、就任する会社と利害関係がないので、客観的な目で経営内容を見ることができます。たとえば経営者が採算を取れない無謀なことをしようとしていたとしたら、それを客観的に見て「辞めた方が良い」と言わなくてはいけません。
逆に内部留保を溜め込み、新しいことに挑戦をしない保守的な会社にはどんどん攻めるようにアドバイスすることもあるでしょう。このように会社が良い方向に進めるような経営助言ができる人材が求められます。
株主(主に創業者以外の機関投資家・少数株主)と経営陣との橋渡し
創業者や経営陣は実際の経営にタッチできる一方、機関投資家や少数株主は影響力を発揮することが難しいです。そのため、社外取締役には双方の利害が一致するように調整する役割が期待されます。たとえば、経営陣で株価のほとんどを保有している場合、その他の機関投資家や少数株主の声は実質的に届きにくくなります。
しかし、このような経営陣以外の意見にも会社の将来を左右する重要なものもあるかもしれません。そんな株主の意見を代弁して直接経営陣に届けるという橋渡し的な役割が期待されます。
社外取締役の報酬相場と決め方
次に社外取締役の報酬はどれくらいあるのかを紹介します。
報酬は年平均663万円
朝日新聞と東京商工リサーチの調査によると、東京証券取引所第1部に上場する企業の社外取締役が、平均で年663万円の報酬を受けていることが分かりました。この調査は2018年4月末時点で東証1部に上場する約1980社の社外取締役について調べられたものです。
特に日経225を構成する日本企業を代表するような企業のうち、報酬が判明した218社の平均は1,200万円と平均値の倍となる高額が支払われています。
高額のケースをみると、1位が日立製作所の3944万円、2位が岩谷産業3900万円、3位が住友不動産3225万円だった。金額を決めた理由について、日立は「グローバル視点が必要で、その水準になっている」(関係者)。岩谷と住友不は「特にコメントはない」と説明する。そのほか、野村ホールディングスなど17社が2千万円を超えていた。
引用元:朝日新聞|社外取締役、報酬は年平均663万円 兼務で高額報酬も
日本の報酬は世界に比べると低い
デロイト トーマツ コンサルティングが実施する「役員報酬サーベイ2015」の調査結果によると、アメリカの社外取締役の報酬は平均2,900万円、イギリスは平均1,300万円程度でした。この結果から見ると日本の報酬は世界に比べると低いということが分かります。
日本では社外取締役という「役位」に対して報酬を支払っており、追加の職務があっても、追加報酬は支払わない。一方、米英では社外取締役という「同じジョブサイズの仕事」に対して一律の報酬を支払うが、取締役会の議長や、指名・報酬委員会等の委員に就任すれば、当然ジョブサイズが大きくなるため、その分の追加報酬を支払うのである。
引用元:これからの社外取締役の選任・処遇の在り方(2)|サービス:人事・組織コンサルティング|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
複数の会社で兼任して報酬が高額になる場合も
社外取締役は、優秀な人材を争奪する傾向にあり、複数の企業を掛け持ちしている人も多いです。先ほどの朝日新聞と東京商工リサーチの調査によると、4社以上兼務する社外取締役がいるところが約300社あり、兼任することで多額の報酬を手にすることも可能になります。
兼務社数の最多は8社で3人、7社と6社が各4人となっており、中には合計の報酬が5,000万円を超える人も存在します。
社外取締役の任期はいつまでか?
社外取締役の任期は1〜2年更新する会社が多いです。しかし、日本企業のほとんどでは一度社外取締役に就いたら企業側から退任を要請されることは少ないようです。そのため、更新を重ねて同じ人が社外取締役のポストに就き続けるケースも多く、平均在任期間が4 年ほどのアメリカやイギリスに比べるとかなり長くなります。
社外取締役の役割として、客観的な目線から活発な議論を促すということがありますが、人気が長くなると議会の緊張感も薄れる恐れがあります。この点から長すぎる任期では社外取締役の役割を十分に発揮できないという懸念もあるのです。
参考:これからの社外取締役の選任・処遇の在り方(2)|サービス:人事・組織コンサルティング|デロイト トーマツ グループ|Deloitte
社外取締役になるには
では、社外取締役になるためにはどのような要件をクリアする必要があるのでしょうか。
社外取締役の資格要件
社外取締役になるためには、以下全ての要件をクリアしなくてはいけません。
1.当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の会社法363条第1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
2.その就任の前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
3.当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
4.当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
5.当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。
引用元:会社法2条15号
経営者や元経営者など経営のノウハウがあると有利
東証1部の社外取締役は約5,000人いますが、このうち経営者・元経営者が半分の約2,670人を占めていることから、経営のノウハウを知った人材を求める企業が多いということが分かります。特に赤字企業を立て直した経験や事業規模の拡大に成功した経験があると、そのような悩みがある企業からの依頼が増えるでしょう。
参考:社外取締役、報酬は年平均663万円 兼務で高額報酬も:朝日新聞デジタル
経営者弁護士や元経営者会計士など専門知識をアピールする
弁護士や会計士、税理士などを社外取締役として迎え入れるケースも多いです。このような士業は法務・経理財務・税務などの専門知識と経験があり、会社経営を違う視点から見ることに優れていると思われるからです。何人か社外取締役を設置する中で、一人は士業の人を迎えたいと思う企業も多く、マッチングはしやすいです。
社外取締役を探しているベンチャー企業などを紹介してもらう
ベンチャー企業の中には、勢いはあるけれど経営のノウハウがなく、ベテラン経営者からのアドバイスを受けたいと思っている企業もあります。このようなベンチャー企業は社外取締役としてノウハウがあるベテラン経営者を探していることが多いです。経営の知識があり、若くて元気の良い企業を応援したいと思っているならば、このような企業を紹介してもらうことで社外取締役に就任できるかもしれません。
スカウトしてもらえるように価値をあげる
多くの会社は、会社の経営をより良くすることを期待して社外取締役を設置するので、自分の価値を上げて社外取締役にスカウトしてもらえるようにすることも大切です。たとえば、女性独自の視線で意見が言える人は重宝されており、女性経営者は社外取締役として声がかかることが多いようです。経営者として目立つ成功事例を作るなどすると良いでしょう。
社外取締役になるならおすすめのマッチングサービス5選
最後に社外取締役になるために使いたいおすすめのサービスや転職エージェントを紹介します。
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ビズリーチはハイクラス向けの転職に特化しており、経営層向けの求人が豊富です。求人を公に出していない企業のヘッドハンターが直接スカウトされるというのが一番の特徴です。
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
コトラ
コトラに登録しておくと、約1,200社の取引先から適性や経歴に合った会社を見つけてくれます。合計23,000人のプロフェッショナル人材が登録しており、社外取締役を探している企業に特化したページもあるので訪問する企業も多いです。
公式サイト:https://www.kotora.jp/
KENJINS
2018年7月に、顧問人材に特化したDRSを開始し、従来は、導入企業から初期費用および月額数十万円にも及ぶ料金を徴収していた一方、顧問人材登録者に対しては、10万円程度の月額報酬しか支払っていないなど、中間マージンの搾取が横行を排除したのが特徴的なサービスです。
公式サイト:https://kenjins.jp/
顧問名鑑(社外取締役名鑑)
社外取締役名鑑では、公式サイトにあるように、候補者の肩書が著名な企業のCEOや執行役員ばかりです。こういったネームバリューの高い候補者が多いことも、特徴といえるでしょう。
導入企業と顧問名鑑の間では、業務委託契約が結ばれます。そして、顧問名鑑がクライアント企業のソリューションを顧問に説明し、顧問と経営課題のすり合わせをしたりします。他方、顧問は、クライアント企業の経営全般の課題抽出などを行った上、アドバイスや具体的な施策の実施についてコンサルティングなどをします。
公式サイト:https://syagai-torisimariyaku.com/
おわりに
社外取締役には経営者や常勤取締役にはない客観的な視点からのアドバイスが求められます。イエスマンではなく、止めるべき事はきちんと意見するなど、経営のためであれば厳しい意見を言う必要があるのです。それが株主を守ることにも繋がり、経営者と株主を繋ぐ架け橋としての役割も期待されます。
社外取締役は、元経営者で経営のノウハウを持っていたり、税理士や会計士など専門的な知識を有したりする人がなることが多いです。兼務することも可能で、実力がある人ならば何千万円もの報酬を手にすることができますが、その分経営に対する的確なアドバイスが求められます。
もし社外取締役になる基準を満たしていて、就任したいと考えている方は、社外取締役の転職に強い転職エージェントに登録することも一つの手です。
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